律子さんへの手紙-手紙2010年7月

手紙その529

2010年7月1日

By Tohshi


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私の母は貴女も承知なれど無類の莨好きでした。母の話によると子供の頃は父親のキセルの紙縒を通して掃除するのが好きで莨の脂で汚れた紙縒を袂に隠して密かにそれを噛む悪い癖が有るのでした。   つづく
  律子さん
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手紙その530

2010年7月2日

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子供の頃から莨好きの母はキセルの掃除と言って脂の紙縒を袂に隠しているのが知れて、ちびのくせにしょうもない無い奴だとひどく叱られながら父親は俺の前だけダゾ!と許してくれたそうです。今思うと実に寛大ですね。
  律子さん
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手紙その531

2010年7月3日

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母はお茶と莨が何より好きな人で長命でした。お茶については蘊蓄を傾けては一家言ありて昔の話なれど空腹でひもじきことでもお茶さえもあらば凌げると口癖でした。猶猛暑の夏にでも母は冷水を口にしませんでした。
  律子さん
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手紙その532

2010年7月5日

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たまたま、或る有名な書家の遺墨筆展を観た後盛況の御寿司屋の席に着いた処、目の前の小型テレビから本日の献立や値段が映り自分の箸の先で注文するのです。タネも上々、総て自動なのです。貴女は目を丸くして驚くでしょう。
  律子さん
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手紙その533

2010年7月6日

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或る呉服屋の物静かな女主人の話では近頃の御着物も、お舟に乗って来るのでございますのよと、なんのことや訝しく聞いてみると中国で縫って再び日本の店頭に並ぶとは開いた口が塞がらず驚きました。私の愛用の作務衣なども可愛らしい姑娘の手製か? ふふ、ふ
  律子さん
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手紙その534

2010年7月7日

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ご存知東京下町名物入谷鬼子母神の朝顔市が始まりました

厚き中
朝顔市の
 涼一輪  冬柿

今年も綺麗な花の鉢が並び、下町情緒です  三日間かぎりです
  律子さん
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手紙その535

2010年7月8日

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今年も庭の梔子の白い清楚で美しい花が咲きました。貴女はこの香り高い花が大好きでした。二十年も経っているのに花の数が少ないので可哀想だからといって切り花にはしませんで遠くから眺めてました。
  律子さん
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手紙その536

2010年7月9日

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箱根八里の街道筋とあらば近頃我が家の辺りに野猿が出没するとならば通学の子供やら家の戸締まりも網戸のみにても猿の侵入を防ぐべく注意せよとの市の放送があり傍らに樫の木の木刀を携え要心しましょう。
物騒物騒!
  律子さん
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手紙その537

2010年7月10日

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菩提寺の院主和尚から再会が楽しみゆえ明朝一番にて盆棚経に来ると電話がありました。貴女が他界してから二年になりました。既に盆提灯も吊り経机に真菰も敷き牛や馬も飾り万端整いましたよ。
  律子さん
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手紙その538

2010年7月12日

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盆棚経にて老和尚は変わりなく元気な御勤めで貴女も同じ年で今年三回忌と感無量のようでした。今は
好きな般若湯も全然飲めず天麩羅や肉もだめ、痩せちゃったと言うが相変わらず巨躯をもてあましてます。
  律子さん
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手紙その539

2010年7月13日

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菩提寺法善寺の和尚の母上は作家井上靖先生の小説、あすなろ物語のモデル、お寺の幸ちゃんで和尚は末っ子宗門で可愛いがられて育ち穏やかな人柄で荒い言葉を聞いたことも無くいつもニコニコと笑っているのです。  つづく
  律子さん
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手紙その540

2010年7月14日

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和尚は身延の日蓮宗で若い時は浴びるほど酒を飲み歩いたなどと豪語する磊落な人で細かいことには拘らず旅とカラオケが好きで夜にもなると町へ繰り出して梯子の癖も影もすっかり忘れたと述懐するのでした  律子さん
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手紙その541

2010年7月15日

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今日は盂蘭盆会で態々親しかった隣の奧さんが貴女の好物の果物を持ってお線香を焚いて想い出を語りて良い御供養になりました。盆棚の設えも相済み夜は焙烙な迎え火を焚き盆提灯も軒下に吊り貴女の来るのを待ちわびているのです
  律子さん
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手紙その542

2010年7月16日

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或、日曜日貴女を誘って海に行きボートに乗って潮風に吹かれ楽しんでいたら激しい汐に巻き込まれ懸命に
漕げどオールは折れて遂に漂流中に漁師の船が遭難を知って危ういところで救助される失態の一幕 つづく
  律子さん
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手紙その543

2010年7月17日

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携帯も無い頃のこと遠く離れる漁村でひそかに逢瀬を楽しんでいた時の珍事人の口に戸は立てられぬというが既に翌朝には母にバレました。夫婦気取りで歩いていたとか尾鰭がついての醜聞が町中に面白可笑しく
吹聴され謹慎でした。
  律子さん
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手紙その544

2010年7月19日

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先日の洪水の映像をテレビで観ると一晩で一面が巨大な湖と化し水の引いた翌朝は駐車してあった十トン余りの大型トラックが数十メートルも離れた所に重なり合って流されている惨憺たる姿を見ると水の力に驚かされました。
  律子さん
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手紙その545

2010年7月20日

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暑中見舞いの御手紙の遣り取りや昔からの古い風習は影をひそめ噂さえも聞かれなくなりました。昔は何処の商店にても名入れの扇子や熨斗のついた粗品など、この時節御用聞きの小僧が配って歩いたものでした。
  律子さん
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手紙その546

2010年7月21日

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昔は何処でも竈の傍らには必ず渋うちわが埃を被っていたものでした。四角な頑丈な竹の骨に和紙を貼り柿渋を塗った物で涼をとるものでなく、七輪に火を起こす為に使ったものにて今は姿を消しました。
  律子さん
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手紙その547

2010年7月22日

By Tohshi


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昔は新聞の片隅に小さな活字で晴れ曇りとかあまり当たらぬ大雑把な天気予報でした。しかし近頃にては
一日中繰り返し繰り返しお天気マークが数日先までテレビの映像で報じられます。さらに豪雨の危険あらば
逸早く洪水の災害などの映像にては今昔の感ですね
  律子さん
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手紙その548

2010年7月23日

By Tohshi


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炎天下の猛暑の中貴女の大好きな高校野球が始まりました。今日は可愛い孫娘が遠い袋井までも学校の応援に行きました。陽に焼かれて帰って来るでしょう。
  律子さん
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手紙その549

2010年7月24日

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世の中には旅行が趣味で日本は、おろか海外へも屡々旅を楽しむ裕福な方が幾らもいて珍しくもないが旅が面倒で嫌いでした。貴女は私が甲斐性が無いので行きたくも行けぬと思っていたのでしょうか  つづく
  律子さん
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手紙その550

2010年7月26日

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貴女が達者で暮らせしは六十余年でしたが余裕も無きゆえ二人で一緒に旅行せしは本当に数えるほどしか無けれども日々の暮らしの中で態々気分転換までして温泉や名所古跡など尋ね歩く旅行は嫌いでしたね。
  律子さん
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手紙その551

2010年7月27日

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今日土用丑の日にて鰻の蒲焼きの匂いが立ちこめて店先は賑わいです。昔貴女は力弁当と申し近くのうなぎ屋から毎月決まって鰻弁当を取り寄せてふるまうので当日子供らは歓声を上げるのでしたね。
  律子さん
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手紙その552

2010年7月28日

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先日来から蝉しぐれが家の前の森では騒がしくまさに夏本番です。今年は稀な猛暑で家の中で暮らしていても熱中症で倒れる方が随分多いとは驚きます。
  律子さん
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手紙その553

2010年7月29日

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青春は長患いにて台無し。貴女の献身の看病の御陰やら、後には心臓の手術で一命が救われたり波瀾万丈と
なれども病み抜いたものか近頃は耄碌の兆しとはいえ今では幸いに暮らしています。
  律子さん
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手紙その554

2010年7月30日

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今年は稀な猛暑にて久し振りの篠突く雨。畑では良い御湿りと嘸かし喜んでいるでしょうね。昔は五風十雨と言って自然をさす言葉でした。近頃は、異常気象にて狂いが出始めました。
  律子さん
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手紙その555

2010年7月31日

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先日はラジオも聞き取れぬほどの土砂降りの雨。夏の雨は馬の背を分けると言われ狭き処でも急に激しく降るかと思うと嘘の如くに突然ピタリと止み静かになる。この時節ならではの天候です。貴女の在す、天国にては夕立に遭ったりしますか

  律子さん
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